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       島谷将文×島谷寿美礼

「あえて抜けているところがほしい.暮すことで埋めてもらって、時間をかけてしっくり〜になれば、一番うれしいです.」

1)ハンクラらしさってなんだろう?

 

 

>居心地のよい素敵な部屋ですね〜

 

島谷寿美礼(以後、寿美礼)−いや〜、ハハハハ

島谷将文(以後、島谷)—トクトクトク(ストーブの上の薬缶をとって、お茶を入れてくれている)

 

>このインタビュー会場、つまりハンクラさんの自宅兼事務所ですが、自らデザインして改装されていますよね.この場所を選んだ理由は?

 

寿美礼−その日、不動産屋さんと一緒に何軒か廻る予定でしたが、一番目最初にここに来て即決しました!

 

>ええ、そうなんですか〜、決めて手は?

 

寿美礼−やはり外の景色ですね、間取りはそれほど気に入ってなかったのですが.

島谷—マンションの雰囲気が落ち着いていて、静かなところ.

寿美礼−築30年なので、小さなお子さんがいるような世帯があまりないので.あと周辺の街の雰囲気も.

 

>意見は一致したわけですね?

 

寿美礼−そうですね〜.「あれっ?」という違和感を感じるところなんかは一緒だったりします.

 

>逆に喧嘩になったところってありますか?

 

寿美礼−えー、あったかな〜.

島谷—トイレの前室.

寿美礼−あ〜あ!島谷は仕事場とプライベート空間を一体的につくりたがっていたのですが、やはり女性からすると、トイレのドアがお客さんからみえるのは嫌だなと.予算的にどこにお金をかけるのかも含めて、前室はもめました.

 

>2人でやることの難しさってありますか?

 

寿美礼−学生時代からずっとですから、これだけ長く一緒にいても、深く掘り下げれば違いが出てきますね.逆に、深く掘り下げなければ、意見は一致します(笑).

島谷—掘り下げると、全く正反対の意見が.寿美礼−どちらかが拘り過ぎるといい案にならないですね.中和した案の方がいい結果になることが多いです.どちらかというと、島谷の方がハード面に関心があり、私は暮らしといったソフト側に関心があります.

島谷—学生時代の方が建築に対する考え方はあっていたかも.

寿美礼−社会人になってそれぞれ異なる職種を経験しています.その時は全然意見が合わなかったです.

島谷—暗黒時代だった(笑).

寿美礼−コンペを一緒にやろうとした時もありましたが、全然一緒につくれなかったですね.今から思えば、お互いに余裕が全くなかった状態でした.2人で独立なんて想像もできなくて、独立って何?って感じでした.

島谷—独立をするって何か?について真面目に話し合ったときもありました.

寿美礼−あの頃、私はカッシーナで働いていたのですが、デザインを直接しなくてもよい、むしろ素敵なお店をしたいという想いがありました.

 

>このままいくと、ハンクラさんが生まれないことに(笑)、一緒にやろうとなった切欠は何ですか?

 

寿美礼−うむ〜、島谷が仕事で名古屋に転勤している時期があって、その期間が切欠と言えば切欠ですね.二人で独立するか、一人でやるかをそれぞれ考えようと.お互いに冷静になって考えました.

島谷−独立するより、先に結婚しよう!となって.

寿美礼−そうなんです(笑).結婚の準備で私が先に仕事を辞めました.そして、最初はハンクラをやろうという意識はなく、単純に生活の足しになればという想いからフリーで仕事を受け始めました.それを島谷にも相談しているうちに・・・

 

>ということは、島谷さんが完全に独立する前にハンクラの仕事を始めることになるのですね?

 

島谷—そうです.一件目がスタートする時はフルタイムでサボーズにいました.一件目が終わる頃になると、谷尻さんとも話し合って週2でサポーズに行くことになりました.

 

>え?今もまだサポーズに所属されているのですか?

 

島谷—そうです.地元が尾道でして、たまたま尾道のプロジェクトが始まって、どうしても担当したかったので、社内プレゼンで積極的に提案したら、案が通ってしまった.そうなると、最後までやりきりたくなりました.今、最初から担当した物件が2件あって、それが終わるまではサポーズに行くつもりです.

 

>ということは、それが終わり次第、独立するということですね?

 

島谷—名古屋から帰ってきて、積極的にプランを自分から提案するようになりました.そして、案が通って担当するようになることで、逆に独立する自信がつきました.それに連れて、ハンクラの仕事も増えてきた感じです.

 

>なるほど〜、ある意味で理想的な独立の仕方かも知れませんね.ユニット名のハンクラとはどういった理由から命名されたのですか?

 

島谷—もともとは学生の時に、同じゼミのみんなでコンペをやろうとなって、その時に考えたユニット名です.それを頂戴しました.

寿美礼−いい響きね〜、可愛いな〜といった理由で私はOKしました.

島谷—語源は半クラッチで、ちょっとずつ進むという意味があります.

寿美礼−新しい名前も考えましたが、しっくりこなかったので.それなら、ハンクラでいいじゃない!と.

 

>今なら、ハンドクラフトという語源でもありなのでは?

 

島谷&寿美礼−それもいいですね〜.

 

>少し意地悪な質問かも知れませんが、職業名は?と聞かれたら、どのように説明されますか?

 

寿美礼−建築家ではないかな、、、なんだろうね?

島谷—難しい・・・そもそも建築家の方と深く話をした機会が事務所の代表以外ではない のでピンとこないです.

寿美礼−逆に、他の皆さんがどのように考えておられるのか気になります.そもそも、私たちは建築家と呼ばれている方々のようなことはできない気がするし、毛色がちがうようにも思います.私たちの場合、そこで勝負しても仕方が無いですし、正直そこはあまり意識していないかもしれません.

島谷—建築家としてのアイディンティティはまだ明確に無いです.むしろ今はそれが武器になるかもと思っています.

 

>どんな仕事の依頼だとテンションが上がりますか?

 

寿美礼−うむ〜、建築というよりかは、個人的には考え方や感性の部分、アイディアだけがほしいといった仕事がきてほしいです(笑)

 

>注目している方? もしくは最近、これはやられたなとジェラシーを感じた人はいますか?

 

島谷—学生の時は奥さんにジェラシーを感じていました(笑).課題で出してくる作品を見て、センスがいいなと.色々モノも知っているし、ボードのまとめ方も、いいな〜と....正直に言うと勝ちたいと思いました.

寿美礼−(笑)私もありますよ.島谷は社会人になって設計の世界にポンッといってしまった.やっていることとかを聞くと、どれも貴重な経験ばかりで、彼の経験に対するジェラシーはあります.私は、性格的にもポンッと飛び込めないところがあるので、彼が何振り構わずやりたいことをやるところはいいな〜と今でも思います.

 

>設計において、意見が合わない時はどうしているのですか?

 

寿美礼−私が、これは嫌だとはっきりいうところはある程度決まっていて、それは機能的なところです.気持ちよさって、空間の気持ちよさだけではないと思うのですよ.なので、お施主さん的にはいいと思いますよ.男性目線、女性目線の両方のチェックがはいるので.

 

>さすが、ちゃんと営業しますね.今は、住宅と店舗がメインですが、もし自由に設計できるとすれば、やってみたいビルディングタイプってありますか?

 

島谷—まちづくりです.尾道の空家再生プロジェクトの影響をうけて、名古屋から帰ってくる時、サポーズを辞めて、話題の徳島県神山町の合宿イベントに参加しにいこうと本気で考えていた時期もありました.たまたまその時は.長崎のまちづくりプロジェクトの依頼をサポーズでうけることになったので思い止まりました.

 

>お二人は、師匠や先生からどのような影響を受けましたか?

 

島谷—今の事務所の代表でもある谷尻さんから全て影響を受けました.それ以外はないです.

寿美礼−私は穴吹時代の西尾先生ですね.最初に建築に触れたのは西尾先生を通してです.あのミニマムなところは相当影響を受けています.西尾先生のゼミに参加して、作品を具体的に見せて頂いて、カタチだけでなく考え方も影響を受けました.2年生になってからですね、谷尻先生に教えてもらう機会があったのは.私は卒業してカッシーナに就職したので、どちらかというと家具・雑貨よりの仕事をしていました.次第に、建築の内側や暮らし方に興味が出てきました.雑誌も、エルデコ・カーサをよく読むようになりました.今から思えば、卒業後、別々の方向でやって来て良かったなと思います.

 

>ここだけの話しとして、谷尻さんは何に影響を受けておられますか?

 

寿美礼−建築以外のところからじゃないですか.

島谷—他のジャンルのかっこいいモノから影響をうけて、それを如何に建築に置き換えるかをいつも考えているように思います.建築の枠を超えて捉え直そうと、常に疑問をいだき続けているところは凄いと思います.

 

>確かに、谷尻さんは、名前のないゼロの状態を考えるといったコンセプトを語っておられますね.

 

島谷—あと、はやいです.キャッチして置き換えるスピードが.速攻なんです.スポーツしている感じに近いです.スポーツしているみたいにケンチクしていますね.

寿美礼−高校時代のバスケットの話しはよく耳にします.ハンディを逆手に取るためにどうしたかとか.例えば、スリーポイントシュートの練習をさらに一歩後ろに下がった場所からやっていたとか.

島谷—常に考えろと言われます.

寿美礼−とにかく凄いエネルギーをもった方です.1つの成功のあり方ではあると思いますが、近い距離で見ていたせいか、ある時点から私の理想とは違っていると思うようになりました.成功の裏には、やはり犠牲もあったしますから.そもそも私たちではちょっと真似できないというのもあり、最近では別の幸せを目指して行きたいとも思うようにもなりました.

島谷—建築の考え方やつくり方は受け継いで行きたいです.

 

>具体的には、どんなところ受け継ぎたいと思われていますか?

 

島谷—仕上げの段階で妥協しないところですね.

寿美礼−島谷も最後の最後まで、コネコネコネコネしています.

島谷—サポーズの教えが「図面通りにつくるな!ギリギリまで考えろ!」ですから

 

2)あえて抜けているところがほしい

 

>ハンクラ方式と呼べるような、大切にしている価値観やデザイン手法ってあったりしますか?

 

寿美礼−そうですね、いつも心がけているのは、どっかでみたよね〜といった既視感はさけたいと思っています.あと、完成され過ぎたものを見ると、興ざめするところがあります.あえて抜けているところがほしいですね.それをクライアントが暮すことで埋めてもらって、時間をかけてしっくり〜になれば、一番うれしいです.作品としての建築だと、どうしても、ここにこれを置いちゃいけないとか、世界観を壊さずに暮らさないといけないとかになってしまいますよね.そうではない建築と暮らしの有機的な関係を目指して行きたいです.なのでハンクラの竣工写真は、いつもしまらん感じがします.その後の暮らしの写真の方が全然いい感じです.特に最近は、竣工時にすべて完成していなくてもよいのではと思えるようになりました.作り込まなくてもいいというか、未完成な状態でも案外いいかもね〜と思えることが多いです.自分の方が開放されて行く感じがします.

島谷—建築を見て感覚的に受け入れられないといった経験はないです.そもそも見ているものが少ないからかもしれません.海外に行ったこともないですから.正直に言ってサポーズの建築しか見ていません.でも好き嫌いはあります.

 

3)「これだ〜」、全て合点がいくシンプルな解き方

 

>好き嫌いの違いは何が理由で生まれるのでしょうか?

 

島谷—それはまだうまく言葉で説明できないです.

 

>設計する際は、どうやって決めているのですか?

 

島谷—ひたすら感覚で

 

>え!え!え!(笑)

 

島谷—社内プレゼンテーションでいつも心掛けているのは、一本筋が通っていたらそれ以外は柔軟にゆれても良い.コンセプトが変わらなければ、プランは変えても良いと.

 

>ここでいうコンセプトというのは、言葉で表現することではないのですか?

 

島谷—言葉というよりも、これだ〜という感じです.色々な問題があるなかで、これだと全て解けてしまうような、全て合点が行くラインのようなものです.これだ〜というのが見つかれば、一気にプランができます.

 

>「か・かた・かたち」の「かた」のようなものですかね.例えば、三滝の家の場合は?

 

島谷—三滝の家は、1階と2階で完全分離の二世帯住宅でした.ここでは、その間にあるスラブを上下にデコボコさせることがコンセプトです.1つの単純な操作で二つ空間が関係性をもちながら機能的にも解けていきました.これだ〜と思いました.すごく単純な操作なのに、色々な問題を解決できるとなると、自由な感じがします.

 

>Stellaの場合は?

 

島谷—最初は直線で設計していました.でも、なぜかしっくりきませんでした.奥深い敷地なのと、歯科医院なので、どうしても受付のパブリックな空間と処置室の奥まった暗い空間が分離してしまいます.それを変えたいと思いました.あるとき、直線をアールに変えてみたら、動線も解けて、奥行き抜けもでき、光もはいって一気に全てが解けました.曲線の回廊は少し歩けば劇的に空間は変化するし、面積的には奥のスペースは狭いのに、広く感じさせることができたと思います.

 

4)「できません」とは決して言わない

 

>仕事の取り方で工夫されていることはありますか?

 

寿美礼−「できません」とは決して言わないようにしています.金額的なこともこだわり持っていません.お客さんを選ぶということはしていませんね.

島谷−ただ、どんな仕事でも断らないで、やってみようとはするのですが、楽しくないモノはどうしても表に出てしまいます(笑).

 

>仕事を断らないって、相当に忙しいのでは?

 

島谷—忙しいですけど、サポーズにフルタイムでいた時に比べると(笑)

寿美礼−正直よくやっているなと当時は思って見ていました.

島谷—サポーズしか知らず、8年間ずっとそれが普通でしたので、自分ではよくわかりません.

寿美礼−最初の頃はコンビニまで出掛けるのもドキドキしていたと言っていたよね.

島谷—朝10時ぐらいから初めて、上の人が帰らないと帰れない毎日でした.

 

5)暮らしの延長線上に仕事があるのが理想

 

>ハンクラさんのビジョンは?

 

島谷—無い...と答えるといつも怒られます(笑).

寿美礼−本当に何も考えていないので(笑).ただ、精神的にゆとりを持った状態で、自分たちの住みたい環境を守りながら、やりたい仕事ができたら最高ですね.仕事のひとつ手前に、生活、暮らしがあると思っています.それを犠牲にするのではなく、大切にして仕事をしていきたいです.でも、どんな大変なことでも、それを好きでやっているとしたら、暮らしが犠牲になっているとは感じないと思います.

島谷—サポーズに入って特に最初の頃は、修行だったので仕事優先でした.

寿美礼−やはり暮らしの延長線上に仕事があるのが理想です.クライアントとも暮らしの話をけっこうします.だから、お客さんとの打合せは島谷邸に来てもらうのは一番いいことだと思っています.最終的にはすごくいい環境で自分たちの暮らししながら仕事をしたいですね〜.場所はどこでもいいけれど.

 

>都会でなくても構わない?

 

寿美礼−今すぐには無理でも、ゆくゆくは自然を活かしたライフスタイルを実践しながら、仕事をして行きたいです.なので、これからも基本は住まいをつくって行きたいですね.子供がいる空間なんかもやりたいです.一方で、最近気になるのは、環境に会わせたシンプルなライフスタイルもありだなと思います.例えば、以前知り合ったクライアントに、収納が半間分しかない住まいに住まれていて、さらにそれを夫婦で二つに分けて使っておられました.普通は収納をなんとかしてほしいとなるところを、そのご夫婦は、衣服は3セットあれば十分だよねという価値観で生活されていました.収納ひとつで、衣服や日常のふるまい、突き詰めて行くとライフスタイルまで、意識が変わると思います.そいう暮らし方に憧れます.かっこいいな〜と思いました.日常の中にある美しさ、民藝的なあり方にはずっと興味があります.

島谷—シンプルだけど豊かな暮らし方.

 

>この度はトークイベントですが、話すのは大丈夫ですか?

 

寿美礼−島谷は打合せでは楽しく話しています.

島谷—確かに打合せは話していてとても楽しいです.

 

>では当日も打合せだと思ってTREESに参加して下さい(笑)

 

寿美礼−参観日にいくみたいな気持ちです.素敵な機会をありがとうございます.よろしくお願いいたします. <つづく・・・> 

 

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